ハシケンのコース解説&攻略 vol.2

The course commentary

Vol.2

211km上級コース前半ガイド
(新地町0km〜Jヴィレッジ91km)

福島を縦断する国内最長ラインレースを完全ナビゲート! 自身もサイクリストとして市民ロードレース経験のあるスポーツジャーナリストのハシケンが、福島県北の新地町をスタートして211km先の葛尾村までを実走。選手目線でコースの特徴や、予想されるレース展開を絡めながらレポートする。

メイン会場は新地町の
釣師防災緑地公園

ツールドふくしまのメイン会場となる新地町の釣師防災緑地公園は、震災後に整備されたオートキャンプサイトやパンプトラックコースが整備されたアクティビティーパークだ。
最大600台を収容する駐車場をもち、レース当日、ここが参加者の基点になる。また、JR常磐線の新地駅が最寄駅。駅から会場までは1km少々なので、輪行でもアクセスしやすい。

釣師防災緑地公園の詳細はこちら!
http://tsurushi.site/

5km地点からリアルスタート

2023年9月10日(日)午前8時、第一回ツールドふくしまの記念すべき号砲が鳴る。釣師防災緑地公園が0km地点となり、スタートから5kmほどはローリングスタート形式になる予定だ。211km&駅伝、53km、91kmのカテゴリーごとにスタートが切られる。
公園を出るとしばらく県道を南下して松川浦のシーサイドを目指す。ちなみに、公園を出てすぐ、国内ではまだ珍しいラウンドアバウトを走るシーンがある。



相馬市に入る5km地点、いよいよリアルスタートが切られる。211kmの部の場合、124km地点までは平坦基調で大集団で進むことが予想される。

大洲松川ラインは
沿岸部のハイライト

福島を代表する景勝地のひとつ「松川浦」エリアへ差し掛かる。地域の物産品や食事処の入る「浜の駅松川浦」、松川浦大橋を渡り、その先の短いトンネルを抜けると、序盤にしてツールドふくしまのコースの絶景ハイライト区間に差し掛かる。



風光明媚な松川浦を突き抜けるように続く5kmの直線道路「大洲松川ライン」は爽快そのもの。この新しい道路は、路面コンディションが抜群によく、路肩の幅も一定。ひとかたまりの集団はハイスピードでシーサイドを南下していくだろう。



海岸線は海風を受けやすいため、風が強く吹けば集団の分断もありうるか。序盤の序盤とはいえ気は抜けない。初回大会ということもあり、有力どころは集団の先頭付近を固めるだろう。

海から田園風景へ

大洲松川ラインを終えて14kmすぎで左折して浜街道に入ると、田園風景へと変わりはじめる。ちょうど収穫目前のこうべを垂らした稲穂が広がる中を走り抜けていくことになるだろう。小刻みなアップダウンはあるものの、基本的にはフラットで特段テクニカルな区間もない。なお、県道74号線、391号線など福島の沿岸部地域を縦断する道を総称して「浜街道」と呼ぶ。

24km地点のスプリント賞

相馬市から南相馬市へと入ると、24km地点のスプリントポイント(スプリント賞)だ。今回の試走を踏まえて、24km地点に設けることが決まった。序盤の平坦区間で、スプリント賞狙いの逃げができる可能性もある。なおスプリント賞は、91kmの部、53kmの部にも同様に適応される。
見通しのよい直線区間で、緩やかな上った地点に設定されている。スプリント賞を狙ったアタックやスプリントが見られるだろう。

福島復興の今を感じて走る

スプリントポイントのピークを越えて下り、左手に風力発電の風車が並ぶなかを走り抜けていく。この付近は、震災当時、津波災害を大きく受けた地域になる。まだ道路工事をしている光景が至るとことにある。32km地点付近には、次世代のロボット産業を支える国家プロジェクトの試験施設「福島ロボットテストフィールド」がある。

47kmすぎ、南相馬市から浪江町へ。海に近い浪江の請戸地区は、津波災害と原子力災害の二重苦を受けてきた場所でもある。ここまで直線基調の浜街道を南下し続けてきたが、いよいよ海岸沿いにお別れする53km地点だ。

国道6号線を交通規制

ここには東日本大震災・原子力災害伝承館があり、ビギナー53kmコースのフィニッシュ地点だ。
伝承館の前を通過すると、211kmコースは国道6号線へと入る。6号線を走る距離は5km少々だが、一桁国道を交通規制して市民レースが開催される意義は、今後のサイクルロードレース文化の発展に追い風になるだろう。
伝承館の先頭予定通過時刻は9時20分ごろ。新地を8時にスタートして1時間20分ほど経過。晴れれば気温が急激に上がり始める時間帯だろう。

東日本大震災・原子力災害伝承館の詳細はこちら!
https://www.fipo.or.jp/lore/

そして、この伝承館に211kmコースの最初の関門が設定される。国道6号線の通行止め時間が10分間であるため、先頭通過から10分後に伝承館の関門は閉鎖となる。ここまでほぼ平坦基調なので、トラブルさえなければほぼ集団通過できるはずだ。大逃げを打ち、メイン集団に10分以上の大差をつけない限りは・・・。メイン集団も易々と逃げを逃さないだろう。

復興の様子を直視する地域へ

国道6号線を含め、今回コースに設定された双葉町や大熊町は、東京電力の福島第一原発に近い地域だ。未だコース脇の道は「帰還困難区域につき通行止め」の看板が目につき、そこに広がる景色にはあの時から時が止まっている感覚になり、胸が苦しくなる。

 

 

 

70km地点、最初の給水地点となる大熊町役場前70km地点手前、大熊町役場前は最初の給水地点になる。登り区間の右側ラインで給水を受け取れる。ここでは、地元大熊町の皆さんの熱烈な応援も予定されている。

70km地点、大熊町から富岡町へと入る。77.5km地点の富岡町総合スポーツセンターには第二関門が設定される(先頭通過後15分)。このあたりから緩やかな下り基調で海岸線へと向かう。浜街道へと出ると、富岡から楢葉、そして広野をつなぐ浜街道を南下していく。昨年全線開通したばかりの新道で路面コンディションは抜群によい。下りの加速を生かした高速の上りが連続するダイナミックなシーサイドロードは、ハイスピードでの集団走行が予想される。

平坦ではない浜街道の
走り方がカギ

高低表全体からは、124km地点までは平坦に見えるが、実はこの浜街道区間は平坦ではない。「平坦91kmコース」のフィニッシュ地点となるJヴィレッジまでのおよそ12kmは、常にアップダウンを繰り返す。211kmのうちのまだ序盤だが、意外に足を削られる区間になるだろう。ここでしっかり足を温存できるか否かで後半の山岳区間で差が生まれるはずだ。集団前方キープは基本としつつ、集団内でうまく立ち回りながら省エネで走れるか否かがポイントになるだろう。

91km地点のJヴィレッジは、「平坦91kmコース」のフィニッシュ地点であり、211kmの給水地点にもなる。また、3人1チーム駅伝の2区から3区へのリレーゾーンにもなる。 また、3つ目の関門が設定され、先頭通過から15分が目安になる。

Jヴィレッジの詳細はこちら!
https://j-village.jp/


ここまで、国内最長ロードレースはまだ120kmを残して中盤戦。
この後、いわき市へ入り、そこからいよいよ後半戦の山岳区間へ突入する。
引き続き、Vo.3「211km上級コース後半」のコースガイドをチェック!



ハシケン
自転車とランニングを専門にするスポーツジャーナリスト。ツール・ド・ふくしまをはじめ、福島復興サイクルロードレースの外部広報を担当。かつてツールド宮古島、市民ヒルクライムレースでの優勝多数。ツールドおきなわ210、ニセコクラシックなど完走経験もある。