ハシケンのコース解説&攻略 vol.1

The course commentary

国内最長211kmは完走が
大きなステータスに!?

コースガイド&攻略ポイント

ツール・ド・ふくしまのコースを、スポーツジャーナリストのハシケンがすべて実走。スタートメイン会場となる新地町「釣師防災緑地公園」からスタートし、211km先の葛尾村「復興交流館あぜりあ」を目指して走る。211km上級コースはじめ、91km平坦コース、53kmビギナーコース、60km山岳コース、そして3人1チームの駅伝の5つのカテゴリーのコースガイドと攻略ポイントをレポートする。

ハシケン
自転車とランニングを専門にするスポーツジャーナリスト。ツール・ド・ふくしまをはじめ、福島復興サイクルロードレースの外部広報を担当。かつてツールド宮古島、市民ヒルクライムレースでの優勝多数。ツールドおきなわ210、ニセコクラシックなど完走経験もある。

Vol.1

コース試走とデータから
211kmレースをシミュレーション

まずはコースデータからコースの難度や攻略のポイントを想定してみよう。211kmをフル試走した上で、211km上級コースのコース高低図を確認しながらコースの特徴を紹介する。
今回の試走はレース本番2ヶ月前に迫った7月初旬に実施した。当日の最高気温は35℃に上った。レースディレクターらとともに、サイクリスト視点でコースの路面状況や危険箇所の確認、当日を想定した給水所の位置調整などを行いながらの試走だ。そのため、211kmを2日に分けて実走した。

実走を終えての感想は、ズバリ、市民レース史上、類を見ないタフなコース・・・。ツールドおきなわの市民210kmに参戦するレベルの強豪ホビーレーサーたちの参加が予想されるが、彼らを持ってしても完走率はおきなわと比べて極端に下がる可能性もある。

その主な理由は、次の4つ。

  1. 後半80kmに集中する休む暇のない山岳区間が破壊力を増している。
  2. 124km地点からの12kmの登坂セクションで集団が崩壊。
  3. 最終盤に合計12km近く登り続け、コース最高標高地点を通過。
  4. 11月のおきなわ以上に、酷暑の9月のふくしま。

中盤こそ細かなアップダウンがあるが、およそ124km地点まではほぼフラットなコースと言える。それが以降は坂道が断続的に続き、終盤になるほど激しさが増していく。わかりやすく言えば、124kmまでは比較的平和な時間が流れ、以降85kmは急激にハードさを極めるだろう。
その124km地点からのおよそ12kmの登坂セクションは、それまで比較的平穏に集団で走ってきたグループを一気に崩壊させる可能性が高い。勾配こそ4%台中ばと緩めだが、12kmも登坂が続く中では地脚の差が生まれる。ここで集団からこぼれれば、以降は完走をめざした厳しい展開が待ち受けるだろう。

さらに、フィニッシュに向けた最終盤は葛尾村の起伏に富んだ28kmの1周コース。200km近くを走ってきてからコースの最高標高地点をめざした約12kmの登りが待ち受ける。9kmをダラダラ登ったあと、一瞬下ってから平均勾配8.2%が約3km続く。最高地点からの下りもテクニカルなので最後まで高い集中力が求められるだろう。
加えて、残暑厳しい夏の福島の天候もタフさに輪をかける。過去10年間のレース当日(9月10日)の天候を確認すると、晴れの日が多く気温は30℃を超える年も多い。

124km地点からはじまる最初の本格的な山岳区間で展開が大きく動くはずだ
最終盤、コース最高地点へ向けた葛尾村の最後の急坂区間は難所になる

このように、過去にツールドおきなわ市民210km(2010年以前の200km含め)を数回走って完走したことはあるが、おきなわ以上にサバイバルなレースになるだろうと予想される。ツールドふくしまとツールドおきなわの距離と累積獲得標高は同等レベルだが、数値以上にツールドふくしまはタフだ。今回211kmを走って、そう実感した。

【実走コースDATA】
ツールドふくしま 211km上級  209.5km 2590m
ツールドおきなわ 市民210km(当時) 206km  2470m

*ツールドおきなわは2022年大会から、最終盤のコースを一部変更。距離210kmから200kmへ。

今回の情報だけでも、211km上級コースの難易度が高いことはお分かりいただけるはず。ただし、厳しいコースだけが魅力ではない。
今回の復興福島を掲げる福島県を舞台にしたラインレースのコースは、シーサイドの素晴らしいロケーションが魅力だ。新設された浜街道は、直線的で爽快そのもの。道幅が急に狭まったりする区間もほぼなく、序盤の沿岸部は落ち着いてレースが進むだろう。
山岳区間の多くを走る国道399号線も昨年開通したばかり。路面コンディションは抜群によく、高速でダウンヒルできるだろう。

そして、震災復興という側面も感じられるコースだ。コースになる15市町村のうち12市町村が、いわゆる避難区域に指定されていた地区を通過する。草木が無造作に繁茂する姿や朽ちた家屋を目にすると、原発事故の厳しい現実を感じずにはいられない。53km地点の東日本大震災・原子力災害伝承館を通過直後には国道6号線を交通規制して大集団が走る光景が見られるはずだ。日本の大動脈のひとつ一桁国道を通行止めする意義は、日本の自転車ロードレースの歴史にとっても大きなものになるだろう。

ツールドふくしまのコース実走レポート。初回は全体の印象を総括した。次回からは、211kmのコースをより詳細にレポートしていく。参加してみたいけれど、いまいちコースのイメージが沸かない・・・。そんな不安を少しでも解消できるようにサイクリスト視点でお伝えしていくつもりだ。乞うご期待!