ハシケンのコース解説&攻略 vol.4

The course commentary

Vol.4

多様な種目のツールドふくしま
(91km/61km/53km/駅伝)

INDEX

距離もコースの特徴も異なる公道ロードレース

東日本大震災から12年と半月。津波被害と原発事故。苦難から一歩ずつ着実に復興を遂げてきた福島県。ついに、前例のないスケールのサイクルロードレースが誕生することになる。福島沿岸と阿武隈山系エリアを縦断し、一桁国道の規制まで行い、スタートとゴールが違う本格ラインレース。さらに国内最長距離211kmのコースは、その難易度も史上最高レベルであれば、参戦メンバーも国内アマチュアトップレーサーたち。福島県内15市町村を駆け抜ける211km上級コースは、ツールドふくしまの看板カテゴリーである。
ただし、211km以外も充実しているのがツールドふくしまだ。91km、61km、53kmという、距離もコースの特徴も異なる種目を用意。さらに211kmコースを3人でリレーするオリジナル駅伝種目もある。ちなみに、このオリジナル駅伝種目は、「福島県知事杯」として開催される。

「復興の浜風」になれ! ツールドふくしま
https://web.tour-de-fukushima.jp/tdf/tdf-top


公道ロードレースデビューにお勧めの53kmコース

まず53kmコースは、公道ロードレースデビューを目指す初心者におすすめだ。公道ロードレースは全国でもいくつかあるが、今回のコースは走りやすさという点に注目だ。スタート地点の新地町から、双葉町の原子力災害伝承館へゴールするコースはほぼフラット基調。初心者の参加を想定して、制限時間は1時間30分とたっぷり。
単純に距離が短く、平坦基調だから初心者向きというわけではない。コースの大部分を走るシーサイドコースは、震災後に新たに作られた浜街道を走る。路面コンディションは抜群によく、道幅が急激に狭くなったり広がったりすることなく一定なので、集団の変化も少ない。集団走行の経験が少なくても走りやすい環境と言える。
コースロケーションは浜街道のハイライトが詰まっている。福島を代表する景勝地のひとつ「大洲松川浦」は本大会を代表するスポットだ。その後、双葉町の原子力災害伝承館のゴール地点までを走る太平洋沿岸を走るコースも、福島復興を感じられるはず。
ほぼ中間地点の24km地点には中間スプリントポイントを設置予定だ。田園からの緩やかな登り勾配のピークにあるため、軽量ライダーにもチャンスありだ。

ゴール手前は、南下してきた浜街道を大きく右折して、ラスト600mほどの直線ゴールを迎える。勝負に絡むためにはカーブ手前でのポジションが大切だ。さらにラスト直線も曲がった直後にスプリントをはじめるには距離が長いため、どこまで我慢してタイミングを見計らって冷静にスプリントを仕掛けるかもが勝敗を決めるだろう。

ロードレース53km(ビギナーコース)の詳細とエントリーはこちら


平坦基調だがラスト1km登りゴールの91kmコース

続いて、211kmコースと53kmコースと同じ新地町をスタートする91kmコース。こちらは今大会の種目の中で中級者向けとして用意される本格ロードレースだ。平坦基調という点では、53kmコースと同じだが、53kmが初心者向けの種目なので、91kmは距離も参加者レベルも中級者向けだ。53km地点でまでは同じルートを辿り、その直後、今大会の目玉のひとつである国道6号線を通行止めして走る区間が登場。国の大動脈である一桁国道を封鎖して集団で駆け抜ける体験を楽しんでもらいたい。
福島第一原発が立地する双葉町、大熊町の多くは、近年まで帰還困難区域に指定されていた地域。帰還困難区域が解除された地域を走ることで、復興の今を誰でも感じることができるはずだ。63km地点で国道6号線に別れを告げて以降、80km地点でシーサイドに出るまでは、ややコーナーの多いテクニカルなコースレイアウトになる。起伏は多少ある程度なので、集団のまま終盤へもつれる可能性が高い。
シーサイドに出たら残り10km少々。ゴール地点のJヴィレッジまでは昨年開通したばかりの浜街道を高速で駆け抜ける。路面状況は抜群にきれいで集団は高速で流れる展開が予想される。途中から逃げるにはやや上りが短く、ゴールはスプリントになる可能性が高い。
ただし、ゴール地点の常磐線駅「Jヴィレッジ」駅の手前は、1km弱、平均6%弱の上り基調。単純なフラットなスプリント決着にならない可能性を秘めている。絶対パワーが小さいライダーは、早駆けで勝機を手繰り寄せても面白いだろう。

ロードレース91km(Jヴィレッジ平坦コース)の詳細とエントリーはこちら


クライマーたちが競演する
刺激的な61kmコース

211kmコースの後半区間が舞台になる61kmコースは、ズバリ山岳レース。距離61kmで獲得標高差は1000mを超える。川内村、田村市、葛尾村の3市村をつなぐコースは、越境のたびに上り下りがあり、その間も平坦区間がなく、常にアップダウンを繰り返している印象のコースだ。しかも、ラスト葛尾村に入ってから、標高758mのコース最高地点を目指すクライマー優位なコースだ。
あえて、この種目にチャレンジする参加者の多くは、クライマー系の脚質だろう。また短めの登りが繰り返される起伏を得意とするパンチャー系のライダーたちがレース展開のカギを握るかもしれない。距離は61kmと短いゆえ、展開が読みづらい種目だ。序盤の登りから脚のあるメンバーで大逃げを打ってたら、意外に成功するかもしれない。なお、(8/22現在)エントリー状況は多種目に比べて少ないため、初代チャンピオンを狙うチャンスかもしれない。クライマーは川内村へ集え!

ロードレース61km(川内村山岳コース)の詳細とエントリーはこちら


区間配置次第!?
3人で力を合わせて211km完走をめざす

211kmコースを3人1チームでつなぐオリジナル駅伝種目は、福島県知事杯の冠がつく。さすが陸上競技の駅伝が盛んな県だけあり、ツールドふくしまでも駅伝種目は特別なステータスが与えられる。この種目は、最高峰カテゴリー211kmコースを一人では完走する自身がないけど、仲間と力を合わせて211kmを走り切りたいという人におすすめだ。3区間のコースデータは次の通り。

1区:平坦基調の91km(獲得標高710m)
2区:平坦基調の63km(獲得標高1200m)
3区:平坦基調の61km(獲得標高1100m)

仲間の脚質や体力に合わせて区間配置する戦略も結果を左右する。平坦基調の1区は集団のまま展開される可能性が高く、集団走行に慣れているメンバーが適任。2区では単独走でもペースを刻めるメンバーが適しているだろう。そして3区のアンカーは、ゴール前の着順勝負を想定して、スプリント力や経験があるメンバーを据えておくとよい。
参加者のサポート面では、大会側が用意する選手移動バス&自転車輸送トラックの無料サービスを利用したい。駅伝特有の3人のスタート地点が異なる点、走り終わった後の移動、スタート&ゴール地点ではメンバーが会えるのかという疑問は、この無料サービスを利用すれば解決する。サービスの事前申し込みと詳細はこちらをチェック。安心して駅伝種目にエントリーしてもらえるはずだ。

オリジナル競技 3人1チーム駅伝の詳細とエントリーはこちら



ハシケン
自転車とランニングを専門にするスポーツジャーナリスト。ツール・ド・ふくしまをはじめ、福島復興サイクルロードレースの外部広報を担当。かつてツールド宮古島、市民ヒルクライムレースでの優勝多数。ツールドおきなわ210、ニセコクラシックなど完走経験もある。