ハシケンのコース解説&攻略 vol.3

The course commentary

Vol.3

211km上級コース後半ガイド
(Jヴィレッジ91km〜葛尾村211km)

福島を縦断する国内最長ラインレースを完全ナビゲート! 自身もサイクリストとして市民ロードレース経験のあるスポーツジャーナリストのハシケンが、福島県北の新地町をスタートして211km先の葛尾村までを実走。選手目線でコースの特徴や、予想されるレース展開を絡めながらレポートする。コース前半のVol.2に続き、Vol.3では後半をレポートする。

復興の最前線基地でもあった
Jヴィレッジ

91km地点のJヴィレッジまでの前半ガイドに続き、211kmコースの後半戦へ進んでいこう。サッカー日本代表合宿地として知られるJヴィレッジは一般宿泊利用もできる。かつて東日本大震災後は復興の最前線基地としての役割を担ってきた。館内では当時の復興の様子がパネルになり振り返れる。もちろん、サムライブルーの栄光の歴史も展示されている。

いわき市に入り、
コーナー多めの住宅街を通過

さて、211kmコースはJヴィレッジを通過して、しばらくしていわき市へ入る。いわき市は県内で太平洋に面した最南端の市になり、スタート地点の新地町から南下してきたコースは、いわき市でUターンするようにして、一路北を目指して走っていく。

95kmから98kmの区間は、コーナーが多く、街中の短い上り下りもあるため、やや複雑なコースレイアウトだ。まだまだ大集団での走行が予想されるため、この区間では上手なポジション取りでスムーズに乗り切りたい。住宅街、JR常磐線の広野駅前、吹奏楽部で有名な「ふたば未来学園中高」前を通過しながら、田園地帯へと抜けていく。その後も、コース高低図では印象に残りにくい小刻みなアップダウンが待ち受ける。

本格的な勝負どころは
124km地点から!

112km地点で県道41号線にぶつかり信号を右折。ここからしばらく内陸へ向けてレースを進めていく。124km地点からはじまる本格的な登坂区間を前にしばしの平坦区間になるので、後半戦に向けて気を引き締めておきたい。

124km地点の国道399号を右折すると始まる上り坂。211kmコースの本当の勝負はここから。残り87kmだ! まずは124km地点から十文字トンネルの入り口までおよそ12kmのヒルクライム区間。勾配は4%台半ばと緩めだが、30分近い登坂の間に脚力差が出て集団は小さくなるに違いない。

12km続く登坂のはじめと
終わりに関門あり

十文字トンネルの入り口手前には、簡易の給水ポイントが設置される予定。この先もアップダウンが続き、154km地点の川内村役場前の給水ポイントまで補給はないため、ドリンクを切らしていたら受け取りたいところ。
関門は国道399号の上り口(第4関門)と、十文字トンネル入り口手前(第5関門)にそれぞれあり、共に先頭通過後20分がリミットタイム。つまり、第4関門を余裕持って通過しない限り、現実的に第5関門でカットアウトになってしまうだろう。

十文字トンネルでは
アイウエアは外して走行

全長約3kmもある十文字トンネルは、トンネル中央がピークになっている。そのためトンネルに入っても登り続けることになる。新設されたばかりのトンネル内の環境はよく、路面コンディションは良好、明るさもあるため走行に問題はない。
とはいえ、集団で走るため、今大会ではライトの装着を推奨。また、トンネル内ではアイウエア(サングラス)の装着を禁止している。調光レンズが明暗差に対応しきれない恐れがあるだけでなく、トンネル内外の温度差によって、トンネルを抜けた直後にレンズが曇ってしまい危険だからだ(今回の試走を経て決定)

トンネルを抜けても
ダラダラ続く登り坂

十文字トンネルを抜けた後も、一気にダウンヒルが始まるかと思いきや、ペダルを回さないとスピードが乗らない、いやらしい区間が続く。戸渡トンネルを通過して川内村へ入るとようやくダウンヒルセクション。一気に下って川内村役場のある中心地へ。役場前には給水ポイントが設置され、第六関門にもなる。先頭通過から20分がタイムリミットだ。また、この地点は61km山岳コースのスタート地点にもなっており、211km先頭が通過後に61kmコースのスタートが切られてコースインする。先頭以降は61kmの選手と混走になる可能性があることもお伝えしておく。

長い坂道を利用した
逃げの展開も!?

このあたりまで来ると、展開は大きく動いているはず。先頭集団のメンバーは各地のレースで力を示している強豪レーサーに絞られているだろう。クライマー系の選手は、124kmからの登坂を利用して逃げを打ち、葛尾村へ向けて先行しても面白いかもしれない。いずれにしても、ここで勝負に残れているためには高い実力が必要であることは言うまでもない。

川内村を通過して
まだまだ続くアップダウン

川内村を過ぎると、田村市へ向けて登りが始まり、下ったかと思えば、国道288号の直登を登り返す。そのまま国道399号に戻ると、いよいよ最後の舞台となる葛尾村へ。

スタートから170kmを超えて、ゴールまでも残り30kmほど。上位争いをする選手も、完走を目指す選手も、暑さと戦いながら苦しい終盤区間を迎えていることが予想される。完走のための大前提は単独で走らず、周りと協調して走ることだろう。

一旦フィニッシュ地点を通過して28kmコースへ

田村市から距離2.8kmの登坂を超えて葛尾村へ突入。ついに、211kmコースの最後の舞台だ。「ツールドかつらお」で使用される周回コースに入る。フィニッシュ地点「葛尾村・復興交流館あぜりあ」前を通過して残り28kmだ。5kmほどしばらく下っていくが、この区間は道幅も狭く無理な追い抜きはリスクが高い。前後の流れに乗ってこなしていきたい。

最終盤に待ち受ける
コース最高標高地点

フィニッシュまで残り22kmほど。124km地点以降、過酷な山岳セクションを超えてきた身体には酷なラストの登りが始まる。まずは田園の中を上り基調で9kmほど。一旦下ったら、いよいよラストの登りがはじまる。なんと、ここに来て211kmコース全体での最高地点をめざして走る。通称「もりもりランドの坂」は、距離2.8kmで勾配7.5%の急勾配。先頭争いも最終盤となり、ここまでのサバイバルなコースを考えると、すでに勝負を決している可能性も高いだろう。ピークを超えたらダウンヒルだが、この下りセクションはややテクニカル。体力も精神力も限界に近い中では、再度集中して丁寧に下りをクリアしたいところだ。

およそ5時間半の
レースを制するのは!?

下り切ってしまえば、あとは「葛尾村・復興交流館あぜりあ」をめざしてペダルを回すのみ。朝8時に新地町をスタートしてからおよそ5時間半近く。随所に福島復興の今を感じるサドルの上からの風景。沿岸部を中心とした前半区間、内陸の阿武隈山系を駆け抜ける後半戦。そして最終盤の葛尾村周回のコース。山岳区間は後半約85kmにギュッと詰め込まれたハードなコースプロフィールは、国内最長のロードレースにふさわしい過酷なもの。

ツールドふくしまの最高峰カテゴリーである211km上級コースを先頭で駆け抜けるのは果たして誰か。


「ハシケンのコース攻略&解説」Vol.4では、211kmコース以外、91km平坦コース、61km山岳コース、53kmビギナーコース、さらには3人1チームで211kmをリレーするオリジナル駅伝、各種目の攻略ポイントを解説していく。



ハシケン
自転車とランニングを専門にするスポーツジャーナリスト。ツール・ド・ふくしまをはじめ、福島復興サイクルロードレースの外部広報を担当。かつてツールド宮古島、市民ヒルクライムレースでの優勝多数。ツールドおきなわ210、ニセコクラシックなど完走経験もある。